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$誌を読んでいるとつい目が行ってしまう記事があるんだけど、それが最近「錦戸亮」なのに自分自身驚いている。クスクス笑った後、記事にしたくてもう一度読み返すと別になんにもいっていない。ラーメンを食べたとか、台湾でタピオカ食べたとか。脱力っていうのか、なんかいいよね。錦戸くん。

で、今日わたしが書き留めようとしているのは、岡田准一語録。

duet 2007/11月号
秋色の近況報告
Activeな季節  より

岡田准一

なんかさ、キレイ、カッコイイ、カワイイっていう被写体には心を動かされないの。人間くさい姿というか、だらしない姿というか(笑)。その距離感が好きだし、「オレにしか撮れない瞬間だなぁ」と思うと、愛おしいんだよね。


岡田くんのオレにしか撮れない瞬間って、愛にあふれてる。人間関係気を抜けなさそうな芸能界で生き抜いているのに無防備で自然体。いや、だからこそ、そういう姿が愛おしいんだ。

脱力しているのにカッコよかったらそりゃあもう、大変でしょ。なんかさ、距離感がわかんなくなっちゃう。それが$誌だと私は思う。

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 2015_09_25



出戻りにもいろいろあるが、
嫁いだ娘が何らかの事情で実家に戻っている、っていうのが一般的。娘のいない私はそんなシチュエーション、考えることもないと思っていた。ところがである。次男が大学を2カ月で休学して実家である我が家に帰ってきた。彼女に振られたのだそうだ。そんなことで運よく合格した国立大学を休学するのか!?


「私、その大学じゃあヤダ」
って、いわれたらしい。
そんなこと、私にいわれたって。
そこ、私の旦那の母校なんですけど。
「いい成績取って、留学していいとこ就職して見返してやれば」
と、平静を装って返事をしてみたが、
「いや、ぼく学校辞める」

ガーン、やっと自由になれたと思ったのも束の間、
また
子どものために尽くす日々がもどってきたのだ。

まあ、まあ、学校をやめるのだけは止めて。
私の、必死のお願いで
退路だけは残して、
彼の宅浪生活が始まった。


日々、勉強に明け暮れるこのコを半ばあきれ顔で見つめる私。

ある日、このコっていつ寝てるのかな?
「いつ寝てるの? やばくない?」
と聞いた時の言葉、
「武井壮は1日に45分間しか寝ないんだって」
私は、返す言葉を失った。

数日後彼は、
死んだように眠る。何時間も何時間も。
そして、起き上がり、
「くっそー」
と、悔しがっているのだ。
「眠らなくて済む人もいるかもしれないけど、○○くんは違ったね」
私の言葉に、
「そんなぁ」
と彼は力なく答えた。
まあ、のんびりいこうよ。

 2015_09_25



社会復帰って、それほど社会から隔絶されていたわけではないんだけど……。


某公共施設の窓口スタッフになったのが51歳だったから、正確には51歳の社会復帰っていうべきなのかもしれない。私が採用されたのは、”土日祝日働きます”というアピールあってのことだったと思う。(採用担当者は、”とにかく明るいのがいい”とかいってはくれてたけどね(笑))一緒に採用された若いお母さまが働けないところを補うって位置。採用された当初はそれでもうれしかったんだけど、その若いお母さまが、”50女なんてエクセル関数もできないんでしょ”、”接客も私の方がうまいのよ”てなオーラを全開にいしているもんだから(おそらくそれの大部分は私の僻みなんだろうけど)もう最悪。私が接客している横から話を取り上げられた日には切れそうになりました。 そんな日々が続き、売られた喧嘩は受けてやるとばかりに、エクセル関数の勉強をしてみた。 もう、なめんなよ! って感じ。”私、事務しかできないんで、力仕事はそちらで”ってスタンスのその若いお母さま。エクセル関数できたくらいでそんな偉いんですか? (こう見えて私、あなたが御得意なVLOOKUP くらいなら20分で覚えました。) ブログで鍛えた書き起こしの技術は見せるのも惜しいけど、見せてやるよ。とばかりに会議のテープ起こしを買って出た私。これは失敗。好きな嵐のみなさんのお言葉ならどんな一言も聞き逃さないんだけど、まあその会議内容の退屈なこと。辛いお仕事でした。 

53歳って、もうボロボロ? そんなことない。ビタミン嵐とセサミンEXのおかげかどうか、私は元気だ。
それが証拠に、次の仕事を誘われたのはこの某公共施設のロビーでのこと。あの若いお母さまではなく、私に働いてほしいとその方はおっしゃったのだ。ちょっと舞い上がって、即断した。その結果、職場の上司には迷惑をかけてしまったけれど、ごめんなさい。私、新しい職場で頑張ります。

私の代わりに、職場にやってくる人が決まった。
61歳だそうです。
土日祝日働ける酸いも甘いも噛分けた私たち、
意外と需要あるみたいです。


よい一日を♪


 2015_09_25



この夏53歳になった私は、嵐オタとして過ごした日々の証でもある$誌を処分しようとしている。どの$誌にも思い入れがあり、その文章はいまだに私の脳裏から離れない。好きというのは恐ろしいものだと思う。この間受験した個人情報保護士のテキストの中身は既におおかた忘れてしまったのだから(笑)。そんなわけで、嵐記事は頭に入っていてそんなに新鮮でもないのだか、捨てるはずが気が付くとうんうんと頷きながら読み込んでしまっている。私はジャにオタではないのだけれど、嵐との接点を通して少なからず他のジャニーズの面々にも思い入れができてしまったんだなと苦笑している。その読み込んでしまった記事から、


2008/10 Wink up
生田斗真の生きた言葉Vol.60 より

生田斗真

このあいだのWinkup でも話したけど、大ちゃんは相変わらずおっちゃん人気があって、このあいだも新発見があったんだよ。六平(むさか)さんがでた回なんだけど、みんな”ロッペイさん”って呼んでるのね。そんな中、大ちゃんだけが「ロッペイちゃんさぁ~」って呼んでたの(笑)。なんでも六平さんのほうから「ロッペイちゃんって呼んで」って頼まれたんだって。”えぇっ、ここでも”って驚いた(笑)。大ちゃん、人気高いなぁ~。




ああ、また大野さんネタだ~。魔王また見たくなっちゃうし、あの六平さんまでも虜にしてしまう大野さんも素敵だ~。そんな大野さんを横で見続けていた生田さんが「土竜の唄」で菊川玲二を演じ切ちゃうのも感慨深い。こんな記事読んじゃうと機械的に$誌を捨てるなんてできなくなってしまいます(笑)。








 2015_09_24


近況です。

Category: 未分類  

おはようございます、南です。

昨日(2015/9/23)Mステ30周年で奇跡の嵐ライブ中継を観ることができた私は、自分の嵐愛が確かなものであることを確認し、今心の奥底から力が湧いているのを自覚しています。大野さんのあの清々しくも凛とした美しいお姿、二宮さんの抜群に生き生きとした楽しそうな笑顔。いやー、素晴らしい。次にコンサートに参戦する機会に恵まれた暁には”結婚していいよ(ハート)”などという上から目線の団扇を本気で用意してしまいそうです(笑)。

さて、私の近況を少し。
今年4月1日、身内が他界し、葬式の次の日が次男の大学入学式。そのあくる日から期日前投票の事務。いやー、今から考えても綱渡りの日々でした。一つ歯車が狂えば、どれかを止めるしかなかったのに気が付いたらすべてをなんとかやり過ごしていた。まあ、文化教室に通えなかったとかひとつふたつの予定をキャンセルはしたけれども……。そこで不思議なのはこれら一つ一つが、点ではなく線となっとその後の私の生活に影響を与えているということ。次男が大学に通い始めて2カ月で休学、受験生に逆戻りしてしまったのです。

このコ、勉強以外の諸々に一生懸命なコで、気が付けは留年ぎりぎり。卒業も危ぶまれたのに、12月ころになって”僕、頭いいかも”とバカ丸出しの単純発言をしたかと思うと、絶対無理だといわれていた、大学に次々と合格、最終的に地方の国立大学に入学を果たし、これって男版ビリギャル!? なんて、親ばかな私は思ったのです。 ところが、彼の彼女はそれを許さなかった。”その大学じゃあ付き合えない”って振られていまったのです。
私は、どこならいいの? と思わず聞いていしまった。
最低でも名古屋。

単純な次男は大学を休学。
最低でも名古屋を目指して勉強中。
宅浪です。
そりゃあもう勉強しています。

そんなこんなで、私、文化教室を止め、彼の学費を稼ぐべく、いままで話を聞いてくれていたバイト先の上司とか同僚に別れを告げ10月からがっつり働くことになりました。

そうそう、点ではなく線だったという話。その働く先が期日前投票を事務をさせてもらった役所。なんだか繋がっていると思った次第。


ああ、それにしても大野さん、いい顔していましたな。
よい一日を♪
 2015_09_24



「じゃあ、俺行くわ」
 七海がこんな風にならなければ、たぶん俺は愛東に入学することはなかったんだと思う。そういう意味では七海にしてやられたような気もする。部屋を出るとき、看護師長の坂本さんとすれ違った。七海の命は部屋いっぱいの医療器材と坂本さんの手に握られていると思うと、俺はつい深々とこの人に頭を下げてしまう。今もガーゼだとか栄養剤だとかがいっぱいのったワゴンを押しているこの人のおかげで七海は命をつないでいるのだ。
「ハル君、おめでとうございます」
 俺に向けられた今日初めての温かな言葉だった。
「あっ、はい」
 続く言葉が見つからずはにかむ俺に、
「いい笑顔ね、七海さんもよろこんでらっしゃるわ」
 だって。
「わかるんですか」
 思わず、聞いてしまった。いつもそばにいて七海を見守っている坂本さんなら、わずかな体のサインを見逃さないのではないかと思ったのだ。
 しかし、坂本さんが困った顔をしたから気が付いた。多分、これもあいさつの続きだったんだ。軽く会釈をして足早に廊下へ出た。俺は人の気持ちに敏感じゃない。言葉を額面通りに受け取って勘違いしちまうんだ。今も、こうして坂本さんを困らせてしまった。
「な理由ないですよね。ホント、俺ってバカだから。ハハハ」
 俺はそのまま病室を出た。右には院長室でその向こうは七海ん家のプラベートスペースだ。左側には自動ドアがあり一般の特別室へと続いている。七海の病室と特別室を隔てるドアの間には一つドアがある。そのことは前から知っていたが気にしたことはなかった。なのに今日は、やけにドアの存在が大きく感じられる。
(あの部屋の向こうには誰がいるんだろう)
 今度、坂本さんに聞いてみよう。俺は後ろ髪引かれる思いを振り切って学校へと向かったんだ。
 2015_04_24



 俺が行く高校は、一貫校の多くがそうであるように中学と高校の入学式を同じ日に済ませてしまう。合理的なのだ。中学から入学した大多数が、適正な距離感をつかみ楽しい学校生活を送るために編み出した幾つものローカルルールが空気のように混ざり合っている学校では、学園の四年目である高校一年生の四月一日は三年目のそれとさして変わらないはずである。彼らが高校入学組を内進者のカンフル剤くらいにしか考えていないことは、中学の入学式で使った式場を豪華な生け花ごと使い回すだろうことほどに容易に想像できた。つまり俺が高校で輝く可能性は限りなくゼロに近い。それでも家から小一時間もかけて愛東に行こうと思ったのは、七海のせいだ。式がはじまるまで三時間もある午前一〇時。俺は通いなれた道を自転車に乗って走っていた。それはもう習慣としかいえない行為で、何の期待も感慨もなかった。若干の怒りはあったかもしれない。
 そもそも愛東を受験することになったのは、これから立ち寄る七海の一言がきっかけだったわけなのに、ハグはおろか、ハイタッチも、おめでとうの一言さえもらっていない。
「愛東にいけば、レイカに会えるかもしれない」
 っていったのは七海だったじゃないか。当たり前の成り行きで、同じ地元の中学へ行くんだとばかり思っていたのに、
「私、愛東にいくことにしたわ」
 こんなに重要なワードを、俺は小学校の卒業式後の別れ際に聞いたのだ。おまけに、
「ハルも、愛東に来て」
 なんていうから、
「なにいってんの? バカじゃないの」
 っていって別れてしまった。三年前のことだ。
 七海の家は大きな病院だった。そこの病院長である七海のかあちゃんから電話をもらたのはそれから三カ月ほど経ったころのことだった。あんなやつとは一生口をきいてやるつもりはなかったが、本当に口もきけない状態だと聞かされたときにはいても経ってもいられなった。自転車で一〇分もかからない距離が果てしなく遠かったのを覚えている。ICUのベッドに横たわる七海は挿管チューブを差し込まれていて、まるでアメリカの医療ドラマの見慣れた一シーンみたいだったっけ。学校で、教室のドアを開けた途端雷に打たれたみたいに倒れたと、現場を目撃した同級生がいっていた。同級生はその教室は誰も立ち入らない旧館にあって、たまたま好奇心でそこに立ち入らなければ発見はもっとずっと遅れていたといわれたけど、いったいなんでそんなところへ一人で行ったんだ。七海のバカ、なにやってんだよ。
「今日は愛東の入学式だぞ」
 時はながれ挿管チューブが外されたが、相変わらず七海は目を覚まさない。人工呼吸器に繋がるチューブが喉の真ん中あたりに突き刺さっているのを当たり前の光景として受け入れている。
だから俺は、 返事なんか期待してない。単なる自己満足、そうだ、習慣としかいえない行為なのだ。
 2015_04_23



 ある日民生委員に呼ばれて実家にいくと、
「もう100歳なのだからしかたない」と、おしっこ臭い家の玄関で体全体が浮腫みトドみたいな父が腰を掛けていた。私は、父を引き取ることにした。

「100歳じゃないですよ、82歳です」
病院で先生や看護婦さんに笑いながら訂正されて、父ははにかんだ。
接する人の笑顔の中で日に日に元気を取り戻し、
「命を拾った」
と私にいった。

しかし、私は笑顔にはなれなかった。
同居の義母には、
「あなたのお父さんと一つ屋根の下に暮らすくらいなら私が出ていきます」といわれていた。
このまま、様態が安定して病院を出ることになっても父を実家には戻せない。
「あなたがお父さんの介護をしたければ、離縁してからしなさい」


私には絶望も許されなかった。
退院までに父の行き先を探さなくてはならない。

                つづく

 2015_04_22



 朝起きると階下から両親の罵り合う声がする。そんな日は決まって母は実家に帰った。取り残された私は家中を掃除し料理を作って帰りを待った。きれいな家と温かな食事は母の心を穏やかにさせ、平穏な生活が送れるからだ。長くは続かないことはわかっていたが、それ以上のアイディアは小学校低学年だった私には浮かばなかった。しかし健気で優しい子だと思ったら大間違い。これは単なる防衛本能だったのだ。それが証拠に「離婚をしたらついてきてくれるか」と母に聞かれたとき、生活が立ちいかないから「ついていかない」といって失望させた。両親の機嫌を取りながらでしか平穏な暮らしが保てない環境から抜け出すにはどうしたらいいか。いつも家を出ることばかり考えていた。チャンスは18歳の春やってきた。、私は大学進学を大義名分に実家を離れた。次兄が私大で獣医の勉強をしていたから家にはまったく私に仕送りをする余力はなかったがそれでも私は家を出たのだ。長いトンネルを抜け、なにもかもが光の中にある気がした。
 母は、一気に年を取りそのまま病の床についた。50代になっていた父は、それまで自営で家にいる生活だったのに突然就職し、外で働いていた長兄に跡を取らせた。母の看病は長兄がした。20代だった彼は世間からどんどん隔絶していった。母の闘病生活は10年に及び私の出産次兄の結婚と時を重ねてこの世を去った。長兄の年齢はは30代半ばを過ぎていた。それから10年ほど父と暮らした長兄は家を出た。父との同居が限界をむかえたのだ。残された父の一人暮らしはご近所や民生委員に支えられていたが、「誰の世話にもなっていない。ちゃんと賃金を払っている」と主張して憚らなかった。天真爛漫自由奔放だった父が、だんだん周りとうまくやれなくなり、強がる言葉とは裏腹に孤立していった。病気がちになった父は、民生委員を寄せ付けず、デイサービスを嫌い介護認定を拒んだ。たびたび私が呼ばれることになった。 高速を使って1時間かけ父のもとに駆け付けるのは子育て真っ盛りの私には大きなストレスだった。でもまあ仕方ない。母の介護と父との暮らしのなかで婚期を失った長兄にはもう頼れないのだ。私の平穏な暮らしが長兄の犠牲の上にあることに私は常々引け目を感じていた。次兄と私はかけがえのない家族を得たが、同時に、この温かで平穏な日々がどんなに大切で儚く脆ういものか知っていた。だから、次兄は始めから親の介護をしないといった。その代わり金を出してくれた。私は、一人暮らしが暗礁に乗り上げ、死を覚悟している父を引き取ることにした。
        つづく



                                                          


 2015_04_21


わたしごと

Category: 日記  

 ようやく地面の湿気が抜けたかと思ったらまた雨「春に三日の晴れ間なし」ってことば、マジ実感です。
 最後の記事を書いたのが11月26日(なんと、大野くん(嵐)の誕生日だった(笑))。あれから5カ月、いろいろあったなとしみじみ。
 父が入院、次男の受験も本番を迎え……。
 結果、次男は無事準地元!?の国立(義姉曰く『お金が安い』)大学に入学、父はエイプリルフールの日、人生に終止符を打った。
 父と次男。66歳の年の差だけど、私の理解を越えているという共通点で結ばれている。
 後期高齢者で一人暮らしなのに民生委員とか嫌い。なんでも自分で決めてしまうのにいざとなると娘を頼りにしているお父さまがいらっしゃる方や、
“高校2年は遊ぶ!”と宣言し言葉通り、進級が危うい状況まで陥ったお子さんをお持ちの方。
 私勇気と希望を与えられるお話ができるかもしれません。
 これ、予告ね。
 このブログ再開の宣言でもあったりします。
 岡田くん語録もね。

よい一日を♪
 2015_04_20



 さきほどから関口冬馬は水晶玉を覗き込み、目に映った像をそれらしい言葉にできないものか模索していた。冬だというのに額に薄ら汗が浮かぶのは暖房のせいばかりではない。
「片思いの彼に彼女ができたみたいなんです」
といったきり名愛高校の制服を着た女子高生が俯いてしまったのだ。それ以上話を引き出すこともできず、問いともいえない問いへの答えを水晶玉に映る像に求めようとするのはしょせん無理なのかもしれない。偏差値60、共学。こんなことが水晶玉に書かれているわけではない。名愛は去年まで通いなれた関口冬馬の母校なのだ。ふわふわのカールがかかったセミロング。店に入ってきたとき微かにジバンシーのラベンダーの匂いがした。見たことのない顔だった。
「一年生だね」
「はい」
ビンゴ。
「自分に自信が持てなくて告白できないうちに好きな彼に彼女ができちゃったってことかな」
ストレスを抱え自分に自信が持てなくなると、香水を使いたくなると誰かがいっていた。何の反応もない。これはハズレか。一勝一敗。次は何を話そうか、と思っていたら彼女のほうが堰を切ったように話し始めた。
「やっぱり、私なんか大夢(ヒロム)には不釣り合いなんです。それなのに私勘違いして。中学が一緒だったんです。一緒に名愛に行こって約束したから……。今となってはそれも私の妄想だったかもしれない。けどわたし相当頑張ったんです。合格したとき、ママ……、あっ、いえ母は愛の力ねっていってたけど、本当にそう、実力じゃなかったんです。ママの言う通り愛の力でやっと受かった私は授業についていくのに精いっぱい。一方、大夢はクラスの人気者で私には眩しくて、もったいなくて。それが、最近……、彼女出来たみたいなんです」
それは気の毒に。
「仕方ないんです……。私祝福しなきゃ」
冬馬が励ましの言葉を選んでいるうちに、彼女は自分で答えを出して立ち上がった。
「あの、おいくらですか」
今の問答に値段をつけていいものだろうか。
「今日はサービス、話聞いただけだから」
冬馬の言葉に彼女は目を丸くして少しの間固まっていたが、ぺこりと頭を下げるとクルリと向きを変え店を出ていった。
「ありがとうございましたー」
冬馬は、ここがシルバーショップであって占い屋じゃあないことも自分がただの客であることもなにもいえぬまま、彼女を見送った。
 セントラルパークのクリスタル広場から少し東に行ったところ、二軒の雑貨屋に挟まれてこのシルバーショップ「ハニーコ」はあった。ドクロやハート、十字架などをモチーフにしたペンダントヘッドや指輪などを売る店なのだが、黒いベルベット調の壁紙やあまりにも狭い間口のせいで、占いの館と勘違いされることも稀ではない。一点物が収められたガラスケースは突き当りのレジ兼作業台の前にある。じっくり眺める客のために椅子が用意されているのだが、それに腰を下ろしうつむいて商品を品定めする後ろ姿はさながら占いの結果を神妙に聞いているときのそれなのだ。そのうえ、作業台の上にはなぜか水晶玉が置いてある。
「トマ、店番よろしく」
フィリピーナのオーナー店長、シンディーさんが、真っ黒のエプロンとずっしり重い鍵の束を関口冬馬に渡し、返事も待たず地下街の人混みの中へ消えてしまったのは今から三〇分ほど前のこと。まさかいきなり占いのまねごとをすることになるとは。女子高生の去った店内で冬馬はぼんやり水晶玉を覗いていた。聞かなくてもいい打ち明け話を聞いてしまったから、なんとなく人ごとに思えない。
(あのコ、彼に告白するかどうか迷ってたのかなぁ)今日はバレンタインデーなのだ。

 梅内チハルは、占いのお兄さんに見送られて店を出るとブレザーの右ポケットに手を入れた。渡そうと思って持ってきたゴディバ。小さいけど本気のチョコだ。地下鉄の改札に向かって歩き出すとホンの一〇メートルも離れていないところに彼がいた。心臓がバクバクする。やっぱり渡そう。一歩踏み出すと、人ごみの陰からいつものあのコが見えた。真直ぐの黒髪にセルロイドの黒縁メガネ。とっても知的で大夢にお似合いの人。そのときだった。チハルは殺気を感じた。その方向に目をやると目を血走らせた女がナイフを持って二人の方に近づいていくではないか。
(だめ! このままでは、二人が危ない。チハルは必死で女の方に駆け寄った。

 水晶玉の中にあの女のコが見えたのは突然だった。水晶玉は本物だった。悲しいほど血走った眼をして、走っているのが見える。しかも、手にはきらりと光るものを持っている。ナイフだ。
「こら、なにやってんだよ」
思わず、冬馬は水晶玉に向かって叫んでいた。

 今のは誰? 心の中に温かく響く声。チハルはふっと我に返った。目の前には大夢がいた。二人を襲おうとしていたナイフを持った女も、いつも一緒にいる新しい彼女もいない。なんだ、よかった。ポケットのゴディバを握りしめた。
あれ? 何かがおかしい。ポケットの中で握りしめていたのはチョコではないみたいだ。
ポケットが濡れている。右手に心臓があるみたいに、ドクドクと熱い。
「どうしたの、チハル」大夢が覗き込む。
「ううん、どうもしてない。さっき一緒だった彼女は?」
「なにいってるの。俺の彼女はお前だけだろ」
「だって、黒髪でセルロイドメガネの……」
「ああ、チョコくれるっていうんで一瞬喜んだらさ、いかにも本命っていう怖ーい感じのやつでさ、なんとか断ってたとこ」
チハルはこの最高に幸せな場面から去らなければならないことを知っていた。右手が限界なのだ。ゴディバのチョコなんて買わなかったのかもしれない。
(なことないよ。左ポケットに入ってるよ)
また、心の中で、聞き覚えのある声がした。
左手をポケットの中に入れると、あのゴディバの本気チョコがあった。でも、大夢を怖がらせることになる本命チョコは渡せない。
「チハル、くれると思ってた」大夢がボソッと、いうのが聞こえる。なんだ、
「これ、あげる」チハルは左ポケットから小さなチョコの包を出すと大夢の目の前に差し出した。
「今日は、これから忙しいんだ。ごめんね大夢。またね」
そっけないと思われたかもしれないけど仕方ない。チハルは左手を振ると改札とは逆の方向へ歩き出した。大夢から少しでも離れたかったのだ。嫉妬に狂ったナイフを持った女の顔が目に焼き付いている。あれは私だった。なにもないのに、大夢を信じられなかった。あのとき、誰かが止めてくれなかったら大変なことになっていただろう。聞き覚えのある温かい声。もしかしたら、神様っているのかもしれない。エレベーターに乗ってチハルは外に出た。外はすっかり暗くなりしんしんと雪が降っていた。上を見ると体がどんどん上に上っていくみたいで、まだエレベータに乗っているのかと思うほどだ。しかし、下を見るとチハルの足元は積もったばかりの真っ白な雪の上に赤い血だまりができている。
「大丈夫?」息せき切って関口冬馬は駆けつけた。
「占い屋のお兄さん、私私……」名前も知らない女子高生を抱きしめながら冬馬は祈った。
「水晶玉、彼女の怪我はなかったことにならないだろうか」
 2014_11_26


コスモス

Category: 短編  

 校門を出て最初の交差点まであと一〇メートル、歩みを止めず考えていた。右か左か。いままで迷ったことなど一度もない。いつものように左に曲がれば一〇分ほどで家につく。迷う必要などなかったのだ。
『コスモスの花を描きなさい』
 理科教師松本が出した宿題だ。それなりに科学的な絵を要求していることはわかる。けど、それがなんなのかいまいちピンとこないんだ。春は桜だった。学校の正門横のでっかいのじゃなくて職員室の脇に植えられた三メートルくらいのやつから咲いたばかりのを採ってきてかなりいい感じの花を描いたのに、帰ってきたそいつの右上には赤で大きくCと書かれていた。おまけに、目ざとくというかなんというか松本がニヤリとして
「シュウ、何か不満か」
と僕を見た。なんかムカつくいい方だった。納得いかなさそうな表情に気付いたのなら、もっといい方ってものがあるだろう。
「不満なんてありませんよ」
「そうか、それならいい。けど少しでも気になるんだったら理科準備室においで、いつでも説明するよ」
「だから気にしてませんって、やだなぁ」
満面の笑顔を返した。
 思い出したらだんだん体が熱くなってきた。キャラ違いの本性を見透かされた気まずさがよみがえる。九月半ばの午後三時、夏の名残の日差しがまだまだ高い入射角でアスファルトに突き刺さる。僕は成績なんて気にしない、いつもご機嫌な人気者だ。それが、髪はぼさぼさで、膝が出たチノパンにヨレヨレのTシャツを着て羽織ってる白衣には幾つも薬品焼けの跡がついている、あんな冴えない理科オタクに見透かされるなんて。ひどい成績をもらって狼狽えた一瞬をあいつは見逃してはくれなかった。もし、また見透かされたらと思うと憂鬱になる。何が何でも隙のないコスモスの花を描きたかった。心は決まった。僕は交差点を右に曲がったんだ。
 郊外型のショッピングモールを抜けて横断歩道を渡ると風が肌を撫でていった。体の火照りがスーッと冷めていく。目の前に広がるのは川沿いの土手に群生するコスモスだった。中に歩みを進めると、一面緑の中で鮮やかなピンクの濃いのや淡いの、それに白いのが一つの生き物みたいに揺れていた。深呼吸すると鼻がムズムズくすぐったい。柔らかですがすがしい香りで鼻腔は満たされた。腰を下ろしたら花は頭上にあった。寝転んでみた。ピンクの裏側はうっすらと白い。花と同じ数の花托が見える。花托ががくを支えその上にやっと花弁だ。昔、たしか小学校五年生のとき覚えた用語がどんどん出てくる。教科書で見た花の仕組みが一つ一つ僕の中で合点していくのだ。頭を起こして改めてコスモスをみた。花の中央に黄色い花粉をたっぷり含んだ沢山の花糸。いや、まて。花糸じゃない。じゃあなんだ。 花だ。たしか、これは菊と同じ。そうだ、合弁花だ。コスモスとの距離が急激に近づいていく。たった一人の絶対的な存在だったはずの僕がどんどんコスモスと同化していく。まるで花の中に埋もれていくみたいなんだ。頭の中が真っ白になってなにも考えられず、仰向けに倒れて上を見た。
 そこには吸い込まれそうな紺碧があった。あまりの碧さに胸が苦しくなって僕はコスモスの茎を握りしめた。この頼りないほどやわらかな一本の茎がかろうじて僕を地球にとどめている。恐ろしくてさらに力が入る。
「大丈夫、ほら、手を放して」
凛とした透き通った声だった。すがすがしい香りがする。眼前の紺碧に今落ちたとして何を恐れることがあるだろう。この声と一緒なら。
「一緒に落ちてくれる」
僕は聞いた。
「いいえ落ちないわ、飛ぶのよ」
「わかった、僕は飛ぶよ」
僕は落ちるのではない、飛ぶのだ。
「一緒に飛んでくれる」
「ええ、傍にいるわ」
何も怖くなかった。僕はコスモスの茎から手を離しふわりと浮きあがった。
「ね、大丈夫でしょ」
「だね」
 周りはすべて紺碧になった。
「随分飛んだね」
余裕ができて僕は声の主を探した。しかし周りには誰もいない。心細さに震えそうになると、
「下を見て」
声は内側から聞こえてきた。いわれるままに眼下に目を向けると沢山のコスモスの花が僕を見つめていた。
「怖いよ」
思わずひるむ僕に、
「負けない強さで見返すの」と声はいった。
「わかった、負けないよ」
すべての花に別々の顔。その一つ一つがまっすぐ僕を見つめている。ならばこちらも絶対的な存在となって向き合おう。今なら僕はそのすべての顔を見分けられる。親しみのある懐かしい笑顔たち。
「ねえ、ねえってば」
遠くで僕を呼ぶ声がする。微かな声は次第に大きくなり僕を揺さぶった。僕は急激に地上に戻されていく。耳がキーンとした。
「ねぇ、シュウちゃん」
「えっ?」声はすぐそばにあった。けど、内側じゃない。もう内側の声は消えてしまった。
「やっと気が付いた」
目の前に同級生のセーラー服のスカーフが揺れていた。
「こんなとこで寝てたら風邪ひいちゃうよ」
「七海?」
「そうだよ、七海だよ」
「どうして?」
「それは、私のセリフよ。どうして私を置いてきぼりにしてひとりでこっちに来ちゃうわけ?」
「あっ」
「忘れてたんでしょ約束、ひどい」
口を尖がらせた。思い出した。幼馴染みの七海と一緒に帰る約束をしていたんだ。
「私との約束をすっぽかして交差点を右に曲がったときは何が起こったのかと思ったけど、松本先生に桜でCもらったのまだ引きずってるんだ。みんな、教科書の絵写してA貰うんだよ」
覗き込む七海のセーラーカラーの隙間からピンクのヒラヒラレースの下着が見える。このまましばらくこのままでいようか。
「何見てんのよ、心配してあげたのにもう知らない」
げっ、七海にも僕は心の内を見透かされていた。けど不思議と不快ではなかった。
「ごめん、ちょっとピンクに目がくらんだんだ」
「もう、本当におバカだね。さあ帰るわよ」
そうだ、僕はバカなんだ。そう思うとなんだか心がどんどん軽くなった。
「ねぇ、宿題の花の絵って、教科書の絵を写せばいいってホント?」
 そして今、理科準備室の前にいる。またC評価をもらったのだ。僕は七海の忠告に従わなかった。
「シュウ、今日の放課後理科準備室に来なさい」
ぼさぼさの頭髪を掻きながら松本がいった。
「はい、うかがいます」
僕は、いつもご機嫌な人気者だ。その上内側から聞こえる声も聞いた。数え切れないコスモスに怯むことなく向き合った。理科オタクの松本なんてもうちっとも怖くない。もはや僕も相当な花オタクだ。もしかしたら、コスモスの花の話や桜の花の話をじっくりできるかもしれない。僕はそれが楽しみでしょうがないんだ。
 2014_10_02



ごく当たり前にそうあるべきだと思い込んでこの学校に入学したのが三年前。大通り駅の四番出口から大学やら商店街やらを通り抜け校門まで一五分、なかなかの距離である。しかも男子校だから学校までの通学路を埋めるのは詰襟の男ばかり。我ながらよく飽きもせず通っているものである。そのためか俺のカバンはバカみたいに重い。サッカーのスパイクだったり、テコンドーの胴着だったりトランプ状のカードだったり、そのときのそのときで内容は変わるけど興味のあるものはとりあえずやってみることにしている。その上、教科書だの参考書だのが当たり前のように加わるわけだからいつもパンパンだ。今日が入学式だからといってカバンの中身は変わらない。とりあえずいろいろ詰め込んである。それに雨模様だからと持たされた傘。これがすっごく邪魔。雨が降ればまだよかったかもしれないが、空を見上げればいつのまにか晴れ間さえ見えている。それにいつもなら誰かが、
「おお、ハル!」
なんていいながら近寄ってくるはずなのに誰も現れない。なんとも居心地が悪い。
もしかしたら、高校入学というのは俺が思っている以上に特別なことなのだろうか。
 2014_09_11



 赤ちゃんはコウノトリが運んでくるなんて話を信じてるわけじゃないけど、
「赤ちゃんはどこから来るの」と問われれば、
「コウノトリが西の空から運んでくる!」
と目を輝かせながら純真無垢なまなざしで問うた相手を見つめ返したい。保健の授業で習ったことなど、記憶の墓場に捨ててやりたいとさえ思う。
 俺は卵で生まれたかった。適温に保たれた無菌室で管理された完璧な卵。研究者に見守られ最高のタイミングで殻を叩かれ、宣告されるんだ。
「今こそ生まれるときですよ、殻を割って出てきなさい」 そして生まれてきた俺は、
「生まれてきたからには自分の責任において生き残りなさい」
と言い放たれるのだ。
 この想像は物心ついたころには既に存在しやさしく寛大な生き方の基本となった。俺はあらゆる親の呼称を拒絶し今もここから二〇歩ほども離れていない寝室で寝息を立てているであろう彩夏ちゃん(おふくろだ)のために朝食を準備する。
 目の前にあるフライパンの中ではローファットミルクにビタミンE強化卵とカロリー甘味料を混ぜいれた液をたっぷり含んだ食パンがジワジワと焼き色を付け、完成の時を待っている。焼き色が薄いと出来上がりがなんだか残念だし焦げてしまっては以ての外だ。細心の注意の必要なこんな時も俺は想像をやめない。
 俺は卵で生まれてきた。
 そもそもこの想像の起源は幼稚園年長の砂場まで遡る。俺には、仲の良い二人の女友達がいた。七海とレイカだ。七海とは物心ついたころからずっといっしょだった。
「赤ちゃんはコウノトリが運んでくるんだって」とそのときも一緒に遊んでいた七海はいった。
「コウノトリ?」
「せんせいが昨日読んでくれた絵本だよ。赤ちゃんを包んだ布をすっごく大きな口ばしでくわえてお空を飛んでたでしょ。  あ~あ、ハルはいなかったかもだけど」
最後の言葉をいうとき、七海の口はほんの少し尖がっていた。七海は時々こんな顔をして俺を見た。
 俺たちの担任はみんなが集まるとまず絵本を読んだ。同じ話を何度も何度も。そんな時は可及的速やかにモモ組に逃げ込んだものだ。話は一度聞けば十分だ。それよりレイカの傍にいたほうがおもしろい。
 レイカは年長の春にやってきた。背が高くて足が速くて頭が良かった。それになんでも知っていた。
「あんまりモモ組ばっかいってるとそのうちひまわり組の席なくなっちゃうよ」
七海は高く盛った砂を両手で固めながらいった。きっそのとおりだ。モモ組の担任に、
「そんなにレイカちゃんが好きならいっそ結婚しちゃう?」
なんていわれたけど、レイカも笑ってたし俺はちょっとうれしかった。
「レイカちゃんが来たら聞いてみようよ」
七海は、砂山に人差し指で丸く線を描いていた。
「ハルはここからね」
そういってさっきとは反対側にもうひとつ丸を描いた。俺たちがトンネルを奥深く掘り進み、お互いに二つの穴をつなごうと見えない右手で探りながら砂を掻き出していたところにレイカはやってきた。
「つながった?」
レイカの声と同時にトンネルはつながり俺の右手は七海の砂だらけだけどやわらかで温かい右手を捕まえていた。
「やったぁ」
七海がトンネルの中で俺の手をしっかりと握りしめた。
「ななみ、痛いよ」
俺がその手を放そうとしたら砂山はあっけなく崩れ、俺と七海の砂だらけの手が柔らかな日差しの中で一つに繋がっていた。
「いつまで仲良く握手してるの?」
レイカの声で七海はようやく俺の手を離した。
「レイカちゃん、赤ちゃんってコウノトリが運んでくるって知ってた?」
七海と俺が園庭の隅の洗い場で砂を落としているときだった。
「そうだね、コウノトリが運んできたんならいろんなことの辻褄が合うよね」
「つじつま?」
俺たちは、その言葉の意味が分からなくて顔を見合わせた。
「つまりね」レイカはいった。
「七海ちゃんやハルんっちにお父さんがいないこととか、私とサトシが全然似てないのは、コウノトリが運び方を間違えたからっていえば納得できるでしょ。しかも私たちはきっと卵で生まれたんだ」
「間違えた?卵?」
「そう、卵だったからコウノトリは中身を見分けられなくて間違えたの」
 レイカはいつでもなんでも知っていた。
 サトシ君はレイカの一つ下の弟だ。レイカのまっすぐな黒髪と違いふわふわとした綿あめみたいな亜麻色の髪を持ち瞳はフランス人形みたいに青かった。七海のママはおばあちゃんみたいに年取ってるし、俺のおふくろは「ママ」って呼ばれるのを拒絶する。 コウノトリに運ばれてきたわけじゃないことや、哺乳類が卵で生まれないことくらい知っているけど、辻褄は合うと今も俺は思っている。
 フレンチトーストが焼きあがった。パルメザンと粗びき胡椒がたっぷりかかったシーザーサラダと茹であがってパリパリプチプチのウインナーがのったプレートに慎重にのせた。キラキラ輝く黄金色のフレンチトーストが冷めないうちに彩夏ちゃんを起こそう。今日は俺の高校の入学式なのだ。
「彩夏ちゃん、朝だよ」
ノックしてドアを開けると、冷ややかな静寂が俺を包んだ。帰っていなかったのだ。
 リビングのブラインドを開けて西を見た。彩夏ちゃんが働く大学のビル群が目に飛び込んでくる。一番高いビルが工学部で、その隣に渡り廊下で繋がっているこじんまりしたビルが彩夏ちゃんの働く研究棟だ。また徹夜だったんだ。
 コウノトリが彩夏ちゃんのところに運んできたのは卵だった。彩夏ちゃんは、卵の俺に命をくれた。この想像をするとき俺はやさしくなれる。ひとりキッチンを掃除し出かけの準備をすませたころ、
「ただいま」
玄関のドアが開いた。白シャツの裾をスキニータイプのジーンズに入れアフガン編みのボレロを羽織ってやつれた彩夏ちゃんが帰ってきた。ブーツを脱ぐとよろよろと廊下をこっちに進んでくる。
「彩夏ちゃんの好きなフレンチトーストだよ」
「ホント、いい匂いだね。けどごめん、二時間後にまた研究室に行かなきゃなんだ。ちょっと寝させて」
冷蔵庫を開けて何か探してる。
「あのさ、今日入学式だけど俺一人で大丈夫だから」
「そっか、今日だったか」
「気にしなくていいって」
俺は卵で生まれてきたんだ、彩夏ちゃんちに間違って届けられただけなんだ。 
「あっ、雨降りそうだよ傘貸してあげるから持ってって」
 彩夏ちゃんは冷えた天然水のボトルをもって自室に消えた。俺はどこにでも傘を置いてきちゃうから結局いつも必要なときにコンビニ傘を買って済ませている。そして、またどこかに置いてきたらしい。玄関の傘立てには彩夏ちゃんの傘が一本。不思議と忘れたらどうしようとは思わなかった。俺は赤い傘を持って雨模様の外に出た。



 2014_09_08



研究者は、生まれてきた俺に
「生まれてきたからは自分の責任において生き残りなさい」
と言い放つ。
 俺は卵で生まれてきた。この想像は物心ついたころには既に存在し他人にやさしく寛大な生き方の基本となった。俺はあらゆる親の呼称を拒絶し今もここから三〇歩ほど離れた寝室で寝息を立てている彩夏ちゃん(おふくろだ)のために朝食を準備しながら繰り返す。
 俺は卵で生まれてきた、と。
 2014_09_03




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プロフィール

南 羊(みなみ ひつじ)

Author:南 羊(みなみ ひつじ)
名古屋在住。

嵐ファン歴6年。嵐熱も落ち着き平穏な毎日をおくっております。嵐ファンが高じて集めた過去の雑誌(嵐の記事以外はかなり廃棄してしまった(残念))から今一度紐解いてみたいと思う人に出会いました。その人は岡田准一。「軍師官兵衛」の感想も書いていきたいと思います。そして、私ごとも…
嵐応援ブログは紐解く雑誌が見つかったら更新したいと思っていますm(__)m

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